活動レポート > 富士の森林復元 ススキ刈り篇
去年の夏は二日とあけずに鳥を見て歩いていたというバードウオッチャーも、エアコンから離れられず太ってしまったという程暑い夏でした。やっと夏日更新が一段落した9月のはじめ、下草刈りに、東京、神奈川、また地元からと表富士の麓に集まりました。山の自然学クラブとして管理できる森林を探していたときに、もともと静岡県が植林したこの場所が見つかって引き継いだものだそうです。富士演習場が見えてくると、よく伸びたススキの野原が続きます。自然学クラブの森林とはどんなところなのでしょう?
りっぱな看板の立つ車道に面したなだらかな斜面は、小高い丘へと続く一面のススキの野原。あまり木は見えませんが・・・。まずは一周歩いてみましょうということで、ゆっくり歩き出しました。道をおおうススキを根元から水平に踏み倒して歩くと、土留めにもなってよいと地下足袋をはいた幹事の中村華子さん。こんなところにも植物への気遣いが感じられます。ススキに隠れてさまざまな木が育っています。中腹まで来ると、大森さんの提案でまずは特設展望台、縄文タワーを見せていただくことになりました。ここからは高木さんのレポートにあった全体図が見渡せ、なだらかな斜面に僅かな谷もよくわかりました
その後、丘の上のブナの稚樹を探したり境界線を確認したりして一周してくるともうお昼。
さて、いよいよカマが配られ、皮の手袋をはめて本日指定の場所へ向かいました。2メートルほどもあるススキをひざくらいの高さで刈って、斜面の隙間に敷いていきます。標高1000メートルほどでしょうか、台風の影響もあってか涼しくて作業もはかどります。だんだんカマの使い方にも慣れてきて、いやー、ハマルハマル、この作業。ストレス解消にもグー。「このアタリは、腰の高さで、このアタリは刈らないで」と細かく指示があったのは、実験的にやっている区域。ここは研究林としての役割もあるようです。自分で植林実験をしてみたい人たちが、それぞれの区域を区切って種まきなども自由に行っているようです。作業終了と同時に雨が降りだしました。今日も一日行いがよかったのか?! 途中、露天風呂でくつろいで、ホテルのような研修センターへ。
夜は中村さんのミニトーク。明治の頃から、建築材に、軍事用にとスギ・ヒノキなど盛んに植林が進められたこと、ブナはよいプロペラ材となったこと、戦後はコンクリートなどの技術の発達や安価な外国からの木材によって林業が立ち行かなくなり、多くの植林地が放置されていることなど、日本の林業の歴史と現状が語られました。このところの土砂災害にもつながっているのでしょうか。公園緑化は別として、山林緑化のための植樹を定式化するのは当分無理でしょう。質問や討論、アルコールも入って熱い3時間。
翌日は朝から雨混じりの中、御殿場口新五合目1440mから幕岩1700m、双子山1800mを周遊。幕岩までは森林地帯。幹の太さを観察しながら歩くと、森として成長している様子がわかりました。幕岩から上は富士アザミ、カラマツ、ダケカンバの世界。しだいにカラマツがフ・ン・バッ・テ生えている感じになって森林限界が見えてきました。イタドリをほっくり返して食べ歩いた動物の足跡が続きます。初めての富士登山はなかなか変化があってすばらしいコースでした。
ある研究によれば、森林1ha当り、二酸化炭素の吸収量は、年間で0.5トンから1トンだそうです。地球温暖化は避けられないとしても、急激な変化を食い止められれば、それこそ人類の本当の勝利かもしれません。帰りにもう一度植林地に行きました。ブナ、ミズナラ等、を植えた実験地を観察。みなよく育っていました。と、だれかが「ミミズー!
大きいよー!」。太くて50センチくらいはある。ススキもミミズも栄養満点。10月には種取りもして、来年にはまた種まきだそうです。よく育つことでしょう。シカもよく来るそうですが・・・。
中村佳世