椿と氷河の報告 /大森弘一郎,長谷川博文,岡内完治 2010年5月
4月にやった氷河調査活動の報告をします。
氷河湖が出来る前の氷河池を発見して、早めに放水路を作っておけば、湖が出来ないだろう。これは我々に出来る温暖化対策の一つとして考えていることですが、今回はそれの始まりです。ただ時期が早すぎて池が凍っていました、次の機会は9月末です。関心をお持ちの方はまず本文をご覧ください、ご連絡を頂ければ幸いです。
2010年4月2日から20日まで、藪椿の植栽普及と氷河調査フライトのためにネパールに行って来ました。
藪椿の詳しい報告は後に譲って、ここでは簡単に、氷河調査については少し詳しくご報告致します。
全ては、インデックスの写真(撮影:大森弘一郎)のような内容ですが、関心をお持ちの方には、この2種類の中のお望みのCDを、各々ほぼ実費の1000円でお送りしますので、ご住所を zero@qb3.so-net.ne.jp 大森 へお知らせ下さい。このプロジェクトは毎年春と秋に行っていますので、参加の関心をお持ちの方は今からご連絡を下さると嬉しいです。いろいろと情報交換を致しましょう。
全体の要約CD(500万画素)
さて、まず椿の植栽について簡単に。日本は椿という「種」の北限で、ネパールは南限です。種子から高級なオイルが取れる日本の藪椿は、将来ネパールの村民の収入になり、生活向上に結びつくのではないかと言うことで、害虫持ち込みの危険の小さい種子を、カトマンズとポカラの周辺の村に持って行って、苗にしています。
今回一番成果の見られたのは、@ポカラ市内のマレパタン農事指導センター、ここには見事に、もりもり成長し始めた稚樹がいました。
Aポカラの南のバイリ村も発芽して育っています。
B今回、はじめてJICAの堀さんと行ったチャバコット村は、養蜂をやっていて、童話にある小人の村のよう。ここでは苗床を作り、1000粒ぐらい種子を植えました。とても熱心そうな方で期待が持てます。
Cポカラ国際山岳博物館はJACAの伏見硯二氏がおられ、私の写真もあって気持ちが近く、伏見さんのお力で椿並木が出来つつありました。さらに苗床用に種を置いてきました。そのほかの数か所については記述を略します。
Dカトマンズのチャルナケール育苗所も熱心な所で、土は良く、ここで育った苗はどんどん貰われて行っています。
次は氷河について。椿と氷河と言う組み合わせを人は不思議に思うようですが。椿植栽はCO2の吸収に寄与してくれるのではないかと思い、氷河は温暖化の悪影響を小さくしようとするもので、我々の気持ちの中では、同じ土俵の中にあるのです。
ヒマラヤには2000の氷河があり、200の氷河湖があり、数十の危険氷河湖があると言います。特にエベレストの近くのクンブ周辺には4つの危険氷河湖が名指しされています。1億トン以上の水を泥と石と氷で固めた堤で支えているのですから、温暖化の結果がどうなるか恐ろしい話ですが、いつ融けて崩れるか分からない状態で、またこの水抜き作業はとても危険で、小さいグループでは手が出せません。
しかし考えてみると、氷河湖はいずれも小さな池から始まっています。そこで小さな池の時に水抜きの水路を作っておけば、大きな湖には成長しないだろう。そういう発想で始めたのがこのプロジェクトです。大きい氷河湖には目をつむり、成長しそうな氷河池を探して、その変化を監視し、最適な対策を取ることはできないかと考えています。
チョーユー(8201m)から流れるゴジュンバ氷河のターミナルモレーンを見て来たのは昨年(2009年)の11月、それで方策を考えました(このホームページの「写真で見る自然学」の14と38を参照下さい)が、今回はその場所をヒコー機(PC−6)で上から見て、状況を理解出来るか、危険度の評価が出来るか、の試みを行い、また日本の人工衛星のALOSを見て気になった、ゴジュンバ氷河やナンパ氷河のターミナルも写して来ました、その結果、実に有効であることを理解しました。次はクンブとロルワリンの全域を調べます。
このPC−6によるヒコー機作戦を使うとすると、われわれの能力の範囲で、ネパール・ヒマラヤ全域の調査をするのも夢ではありません
氷河調査のCD(1200万画素)
この2枚目のCDの中には今回の試みの一部が入っています(このほかにデジタル化していないブロニー版の細密画像もあります)。180km/時の速度で飛びながら、ほぼ0.4秒間隔で写していますから、番号が続く2枚の撮影間隔は約20m、この中より解析に都合のよい、好きな基線の2枚を選んで使えます。12MB、1200万画素の画像は重くてメールでは送れませんので、生データーをCDにしました。このCDの画像を使って、ご自由にご検討下さる仲間が増えると嬉しいです。ALOSをベースにして、このようにネパール・ヒマラヤの氷河の、或る年の全域調査と記録をすることは、我々のすぐ身近にある、出来ることだと判りました。
今回の飛行コースは、〈シャンボチェ→エベレスト周辺→チョーユー周辺→ナンパラに近づき→ゴジュンバ氷河→ルクラ〉で、インデックスの写真に地図と飛行コースが入っています。
丁度ネパールから帰った日に、雪氷学の大家の樋口敬二先生から、ボイジャーの本が贈られて来ていました。「夢に向かって翔べ、ボイジャー」樋口敬二著です。文中、「日本人は始めてのことにおじけ、アメリカ人は始めてのことにふるい立つ」とありました。どうかこの氷河の話を読まれた方、ここにある地球温暖化対策への挑戦にふるい立って下さい。
このCDは何にお使いになってもご自由ですが、公表する時は出所を明記下さい、またもし商業的にご使用の時は、利益の一部をプロジェクトにご寄付頂ければ幸いです。
◎このプロジェクトは以下の皆さまのご援助に助けられて行っております、厚くお礼申しあげます。
(株)共立理化学研究所、(株)椿、シービーエス(株)、シャレークリスチャニアのお客様、32応化会、(財)リモートセンシング技術センター、JAXA、ヒマラヤ観光開発(株)、シャム・バハドゥール・ドンゴル、スニール・プラサド・セルチャン、TARAエアー、ポカラ国際山岳博物館、ICIMOD、マレパタン農事指導センター、チャルナケール育苗所。(敬称略)