自然保護の現場を巡る@/三善 信太郎(午前の部)・門司 和夫(午後の部)

6月5日(日)桶川駅9時集合
参加者10名 会員5名 学生5名

午前の部

 目代邦康会員と大森弘一郎会員の企画で,自然保護の現場を巡る現地講座が行われました.里山など身近な自然を保全する活動が各地で進められていますが、そこを訪ねて、その地域の人たちと交流し、実態を知り、理解し、できれば手伝おうというものです.第一回目の午前の部は荒川の支流江川でナショナルトラスト活動をしているNPO法人エンハンスネイチャー江川の活動を見学させていただきました.

 江川は荒川の支流の小さな河川です.荒川の周りは,以前は湿地が広がっていました.河川改修により農地や住宅地化が進みます.江川の周辺は,「荒沢」とよばれる,地元の人もあまり手を入れない土地でした.そのため,大規模な工事が行われることなく,氾濫原の自然環境が維持されてきました.そこに水辺に育つ絶滅危惧種などが多く生き残っています.最近は,低湿地に違法な産業廃棄物の埋め立ててが行われています.
 エンハンスネイチャー江川は,サクラソウに代表される荒川沿いの湿地の植物,そしてそれが生育できる環境を守ろうと,土地の購入,借り入れ,夏場の葦の刈り取り,外来種の除草などを行ってきました.

 トラスト地で,これまでの経緯や現在,ここに国道建設の計画が持ち上がっていることなどをお話いただきました.国道の建設の事業に対して希少種の植物をいかにして守っていくか模索しているようでした.

 お話の後に特別に管理しているトラスト地を案内させていただきました。オオヨシキリが盛んに鳴いていましたが数も減っているとのことでした.セイタカアワダチソウなどの外来の植物も葭原の管理の大きな問題点となっているようでした.

 貴重な動植物の保護と、地域の方たちとの共生という問題は,新聞などで目にいたしますが、現場での取り組みを初めて見させていただきました.問題を抱えながらも後世に貴重な財産を残していこうと取り組んでいるかたに感銘を受けました.エンハンスネイチャーの方達と集合写真を撮った後、青梅に向かいました.

午後の部

 「日の出処分場」の環境汚染についての調査活動をしている地元の「たまあじさいの会」の方々の案内により、馬引沢峠まで登り、フェンスの外から「エコセメント工場」と「最終処分場」を視察した後、公民館での懇談会に出席した。以下はその概要報告である。

 車から降りて、徒歩30分の馬引沢峠まで林道を歩いた。沿道の植物がところどころ枯 れており、日の出町処分場からの排気ガスの影響が疑われるとのこと。  峠に近づくと、鬱蒼とした森林の中から異様な音がしてくる。峠に着くと眼下の盆地状 の場所に忽然として周囲を森林に囲まれた「日の出処分場」と「エコセメント工場」が 見えてくる。山中にふさわしくない異様な光景である。

 この場所が、飲料水として使われている東京都水道局の羽村取水堰の上流に位置するの は気になるところである。東京地裁八王子支部の日の出町処分場差し止め訴訟の判決で も、地下水汚染の事実認定をしているとのことである。

ここにおける最終処分量は、2006年7月からのエコセメント工場の稼働(最終処分場の 延命策)に伴い大幅に少なくなっている。

 各自治体から搬入されるゴミ焼却灰は、乾燥炉で水分を除かれた後、セメントキルンで 焼成され、出来たセメントは完成した製品としての出荷ではなく、パラセメントとして 太平洋セメント(株)の工場へ運ばれ、そこで更に処理された後に「エコセメント」と して製品になっているとのことであるが、大量生産されているセメントの一部として薄 められて、一般に出回っている可能性も否定できないとのことである。

このような市民の手による地道な調査活動が、焼却灰の飛散やダイオキシンによる公害 発生の抑止力となっていることは大きく評価されるべきでしょう。