山の自然学クラブ:里山再生活動

里地里山とは

里地里山(以下「里山」)とは、都市域と原生的自然との中間に位置し、様々な人間の働きかけを通じて環境が形成されてきた地域のことです。集落をとりまく二次林、それらと混在する農地、ため池、草原等で構成されている場所です。 里山には二次林が約800万ha、農地等が約700万ha含まれ、国土の4割程度を占めます。

里山が果たしてきた役割

里山は地域の人々が共同で利用する、生活に欠かせない場所でした。

  • 耕作地:穀物や野菜など食料生産の場
  • 人工林:木材生産の場
  • 二次林(雑木林):広葉樹は炭、松葉などは焚きつけ、落葉は堆肥
  • 竹林:タケノコは食用、竹材はあらゆる日用品、農業資材

希少種の宝庫でもある里山

里山は同時に、希少な植物や動物の宝庫でもあります。
環境省の調査では、希少動物の49%、希少植物の55%が里山地域に分布しています。下の図は国土の中での里山地域の分布と、希少種の分布を表したものです。

人が関わりながら保たれてきた里山の自然を保全していくことは、日本の自然や日本人の気質を守っていく上で非常に大切なことだと、私たちは考えます。

日本全国の希少種分布

出典:里地里山パンフレット(環境省)

里山の荒廃を改善するために

里山は周辺の人々が生活(特に農業)に必要な生物資源を提供する場として、管理手法が伝統的に確立していました。しかし、様々な理由から人の手が入らなくなり、荒廃が問題になっています。

主な現象

  • 都市近郊の緑が荒廃し、都市の人間がますます自然から遠ざかっている
  • 利用できる植生(植物資源)が消失し、身の回りのものが付近の農林地から供給できなくなっている
  • 健全な緑がなくなり、里山がCO2の吸収源から排出源へ転換してしまっている

緑地の重要な機能としては、ヒートアイランド現象の緩和、空気の浄化、騒音の緩和、生物生息空間の確保、遺伝子資源の保存などが挙げられますが、これらの機能は大きく損なわれています。

なぜ里山が荒れてしまうのか

社会情勢の変化から様々な要因が重なり、人の手が里山から遠ざかっています。その結果、他の植物よりも生態的に優位なタケだけが増えてしまい、多くの地域で里山にタケが侵入して問題になっています。

社会情勢の変化と里山の荒廃・竹林の増加 竹林の拡大 竹林の分布

最近ではたくさんの里山で住民の方やNPO法人が主催・参加する活動などによって里山整備が行われています。私たちも里山の回復に寄与する活動を進めていきます。

参考:里山管理制度の整備について

■平成10年6月 地球温暖化対策推進本部決定「地球温暖化対策推進大綱」

身近な森林である里山林の整備を住民参加によって進める。緑化空間の創出を促進する。

■都市緑地保全法(S48制定)

・緑地保全地区制度(制定時より)
風致・景観を守るため自治体が指定

・改定:管理協定制度(H13より)
地方公共団体または緑地管理機構が 緑地保全地区の土地所有者と管理協定を結ぶことができる

・改定:市民緑地制度(H7より)
都市計画区域内300m2以上の土地について、市民緑地契約を締結、5年以上の期間で住民の利用に供する

・改定:緑地管理機構制度(H7より)
一定の能力を有する公益法人もしくはNPO法人を知事が指定、管理主体と位置づける